営業と製造の壁をなくす方法を「はやぶさ2」の部品会社に聞いてみた
こんにちは!
先日の土曜日、ハーフマラソン完走しました!
ケガをして以来、久しぶりのマラソン大会でした。これをきっかけに再開したいと思います。
ゴール直前の足がつりそうな様子
このレターでは、私が実務を通じて学び、成果が出たものを中心にコンテンツをお届けします。新規事業の立ち上げや法人営業、学習、読書、デジタル活用などを扱います。登録は無料です。メールアドレスだけなので、よかったらぜひ登録してみてください。
こんな経験ないでしょうか?
(営業)せっかく仕事をとってきたのに、生産部門からいい顔をされない・・・
(製造)営業が仕事をとってきたが、要件が曖昧で製造で巻き取っている・・・
前回は、先行指標管理という仕組みについて、ご紹介しました。
今回は、部門の壁を超えたコミュニケーション施策について、前半は抽象的な内容で、後半は事例をご紹介します。
こんな方におすすめです
・何か始めようとすると、協力が得られない
・自分の考え方が、人に伝わらない。
・人が動いてくれなくて困っている。
近年、ティール組織という言葉が流行っています。ティール組織は簡単に(実際は複雑ですが)言ってしまうと階層がなくフラットな組織です。この記事では、ティール組織のように階層がない組織ではなく、階層があり、部門間のやりとりが発生する組織を想定しています。
今回の記事では、「ある目的達成のために、人から協力を得て、実行するための組織コミュニケーション施策」についてお話します。
対立構造になってしまう理由
まず、はじめになぜ人から協力を得られないのでしょうか?
1.自部署・自分の役割を果たすために一生懸命になっている
株式会社のような経済合理的な組織では、役割分担によって「効率」や「専門性」の追求が求められます。役割分担の弊害で、自部署や自分の立場からしか、物事が捉えられなくなる傾向があります。特に自分の役割を果たそうと責任感が強い方は、対立構造が強くなる傾向があります。
2.主語が私になっている
上記の話に続きます。自分のことで精一杯になると、どうしても「私は○○したい」「私は○○してほしい」と思考の起点が「私」になっていきます。人は特にアイデンティティを脅かされると、反応的になります。「私」をどこで捉えるかで、怒りや恐怖を感じる範囲が異なります。それが、「営業」や「製造」、「経理」など役割や仕事が、アイデンティティとなります。
3.自分と同じように相手を理解しようとしていない
自分が起点の思考には、相手視点が消えています。「自分の考えをどうやってわかってもらうか」ではなく、「相手の考えをどうやったら深く理解できるか」と考えることが必要です。
何かを伝えたいと思うと、ついつい自分視点になりがちです。それにこのように書いても「いや、相手のことを理解する時間はない。こっちも忙しいのに」という反応がありそうです。
対立構造を解消する方法
相手を理解する方法は、3つあります。ひとつは話を聞くこと。どんな価値観を持っていて、何が好きで、何が嫌いかを知ることです。相手の関心に同じように関心を持つことが大切です。ふたつ目は、同じ体験をすることです。具体的には、営業が製造の仕事をしてみる、設計が製造に携わってみる、担当者が役員のカバン持ちをしてみる、などです。最後は目的を共有することです。相手のやりたいこと、そして自分のやりたいことを共有し、目的を統合します。ここにきてはじめて自分がやりたいことについて、話をします。「説得」ではなく、「共有」が大切です。
組織にいると自分の仕事に精一杯で、他の仕事に手が回らないかもしれません。繰り返しになりますが、多くの場合、部門間の壁やすれ違いは、自部署の役割を全うするために起こります。
事例:みんなで未来を共有する夢マップ
今回は人工衛星用のネジを加工しているキットセイコー様の事例をご紹介します。
キットセイコー様は小惑星探査機「はやぶさ2」のネジを手がける企業です。埼玉県羽生市から、一躍その名を世に知らしめました。同社の経営の真髄を田辺弘栄社長に伺った内容をご紹介致します。
キットセイコー様 本社
キットセイコー様は、夢マップの作成によって部門間の壁を取り払いました。
夢マップを導入する前は、営業が仕事をとってきても、製造や品証部が前向きな気持ちで仕事に取り組むことができていませんでした。
そこで、田辺社長は夢マップというアイディアを思いつきました。夢マップとは、社員各自が自分が作りたい製品を書いて、みんなに共有できるようにしておく施策です。例えば「ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンの部品をつくりたい」など、社員の声を集めておきます。
夢マップ ひとつの夢のイメージ
つくりたい製品を掲げておくことで、受け身ではなく、能動的に生産に関わるように意識が変わります。例えば、営業は、「あっこの製品を作りたいと言っていた人がいるな」、であったり、製造部門は、「これはあの人がやりたいと思っていたから、なんとか形にしたいな」という考えになります。
そのようにして、ひとつひとつの製品に社員の夢や想いを乗せることで、部門の壁を超えて協力し合える環境を作ることができました。
事業戦略との整合性
実は、夢マップはキットセイコー様の事業戦略と合致しています。キットセイコー様は、「領域を限定しない」、「量産はしない」と決めています。あらゆる分野の産業から、「少量だが難易度が高く、一定の需要があるもの」を仕事にすると定めています。量産ではなく、ボリュームを意図的に抑え、1社ごとの案件を丁寧に対応されることで、他社が参入しづらい案件を獲得されています。
そのため社員の方が、やってみたいと思ったことが、そのまま案件になる可能性があります。
ウェブサイト上や展示会では、「宇宙」×「ネジ」を明確に打ち出されています。実際は、あらゆる複雑な加工に対応できる技術力を持っていますが、戦略的に「宇宙」×「ネジ」と明確に打ち出すことで、ブランドを築かれています。
もし、キットセイコー様のような戦略とは異なる場合、それはまた違った施策になりますが、ポイントは、「各社員の関心を理解し、それぞれの目的を共有すること」です。
今回は以上になります。ご一読いただきありがとうございました!
ぜひ読者登録とこのレターのシェアをお願い致します!!感想もお待ちしております。
すでに登録済みの方は こちら