売上を安定させる先行指標管理の仕組み

ヨミ表を活用し、稼働率を安定させる方法
杉山純一 2022.06.15
誰でも

こんにちは!杉山です。

唐突ですが、私のルーティンについてご紹介します。私はお客様に提案するときに、椅子の高さを他の人より高くします。そうすることで、物理的に提案の視座を高くしようとしています!打ち合わせの時に視座を高くしたい方におすすめです。

画像はイラストACより

画像はイラストACより

今回は売上を安定させる先行指標管理の仕組みについてレターを書きました。

このレターでは、私が実務を通じて学び、成果が出たものを中心にコンテンツをお届けします。新規事業の立ち上げや法人営業、学習、読書、デジタル活用などを扱います。登録は無料です。メールアドレスだけなので、よかったらぜひ登録してみてください。

今回の想定している読者の業種

  • 受託生産の製造業

  • 受託制作を請け負う制作会社(ウェブサイトや映像、会社案内など)

  • システム開発

  • コンサルティング業

  • 人材派遣会社

こんな方におすすめです

  • 売上を安定させたい

  • 設備または人の稼働率を安定させたい

  • 繁忙期と閑散期があり、仕事に波がある。設備や人の稼働計画が立てづらい

このレターでは、設備や人の稼働率を計画できるようにし、売上を安定させる方法についてご紹介致します。それでは早速、その方法についてご紹介します。営業(マーケティングや営業部門)の方におすすめの内容です。納品に携わる部署(製造や制作部門)の方にとっても、営業の情報は参考になると思いますので、ぜひご一読ください。

先行指標管理の仕組み(=ヨミ表)とは

冒頭で記載した想定する読者の業種(受託生産の製造業、受託制作を請け負う制作会社、システム開発、コンサルティング業、人材派遣会社)に共通することはなんでしょうか。

それは、「売上」と「人または機械の稼働率」が連動していることです。これらのビジネスの売上が安定しているときは、稼働率も安定しています。

稼働率を安定させるためには、常に一定のボリュームの仕事を持ち続ける必要があります。そのためには、「未来の仕事を見込数字として管理」し、現状の仕事が終了した後、すぐに新しい仕事を取り扱える状態にすることが肝になります。

筆者作成

筆者作成

先行指標管理とは、現状の見込数字を可視化し、目標達成に向けてアクションプランを考え、その優先順位をつける思考を促す仕組みです。ポイントは、「見込数字を扱うこと」にあります。その数字はビジネスによって異なります。売上もしくは粗利など企業で指標にして追いたい数字を設定します。この仕組みはリクルートで生まれ、ヨミ表と呼ばれています。ヨミ表はExcelやスプレッドシートで簡単に作成することができます。ここからは先行指標管理の仕組みをヨミ表と記載して説明します。

ヨミ表のサンプル。数字は実際の数字ではありません。(筆者作成)

ヨミ表のサンプル。数字は実際の数字ではありません。(筆者作成)

なぜヨミ表というのか

ヨミ表は予測の「ヨム」という意味が込められているため、「ヨミ表」と呼ばれています。ヨミ表の中で、何を予測し、管理しようとしているのかを下記ご説明します。

確度:どれくらいの確度で決まるのか(上記画像J・K列)

ヨミ表は「受注(成約)」「Aヨミ」「Bヨミ」「Cヨミ」「Dヨミ」「失注」の5段階で案件を整理します。

また、各段階によって係数をかけます。受注を100%、失注を0%でかけます。

「受注(成約)」:100%

「Aヨミ」:80%

「Bヨミ」:50%

「Cヨミ」:20%

「Dヨミ」:10%

「失注」:0%

受注確度をつけて、係数をかけることで、今すべき行動を決めることができます。

例えば、目標数値に対して、案件全体の合算値が足りていなければ、新規を増やす行動をします。また絶対額も大きく、確度も高ければ優先的にアプローチをして、契約を獲得するように行動します。他にもBヨミの案件が多ければ、Aヨミにあげられるような行動をします。

係数は期待値になるため、絶対額でみるよりも、より現状を現実的に捉えることができます。

受注(成約)であれば、わかりやすいのですが、「Aヨミ」「Bヨミ」「Cヨミ」「Dヨミ」「失注」はどのような状態であると定義すればよいでしょうか。それは、自分達が主語で「提案書を出した」「見積書を提出した」ではなく、「お客様の案件に対する認識や行動」によって定義します。

Aヨミは、「お客様が社内稟議に回し、あとは返答を待つだけ」

Bヨミは、「予算と決裁者への承諾を得ているものの、競合との比較がまだできていない」

Cヨミは、「社内でプロジェクトが立ち上がっており、情報収集で提案と予算を集めている」

Dヨミに関しては、こちらの意志で提案したいネタとして捉えるような案件になります。

上記はヨミの一例です。社内で議論して、各段階の定義を各社で決定することが大切です。

時期:いつ決まるのか(上記画像D列)

ヨミ表では、案件がいつ決まるかという情報を管理します。具体的には、「案件が立ちあがった日」「受注予定日」「納品日」の3つを管理します。

「受注予定日」と「納品日」を分けることは重要です。先行指標管理の仕組みで扱う数字は、主に「受注予定日」になりますが、実際に会社が売上を計上するのは「納品日」になります。営業が受注予定日に集中することは、今すべきことを分かり易くするために良いことではあります。しかし、経営としては、いつ売上が計上されるのかという情報も管理する必要があります。(もっと細かく入金日まで管理することでキャッシュフローのマネジメントもできます。)

時期に関しては、業種・業界によって幅があるため、社内で認識合わせをすることが重要です。例えば、WEBサイトや会社案内の制作であれば、数カ月で受注から納品まで完了します。営業は3ヶ月~6ヵ月先の案件を獲得することに注力します。今の案件が数カ月後に終了した際に次の案件を契約できるようにプールしておきます。

これが、大手法人を顧客にするのであれば、予算期を狙って〇〇月に提案書と見積書を提出して、先方社内で認知されていることが必要になります。1年に1回しかコンペがない仕事であれば、その仕事を失うと年間を通じて危機に陥るため、年間を通じてそのコンペに向けて顧客にアプローチしておく必要があります。自動車業界であれば、3年先のモデルチェンジに向けた仕込みになるかもしれません。

この時期の管理は、自社のお客様の商習慣などによって、影響を受ける部分になります。どれくらい先を見据えて案件を管理するかは、経営判断になります。

金額:いくらになるのか(上記画像F~H列)

これはわかりやすく「案件がいくらになるか」を管理します。

大切なポイントは、案件の数字が算出された根拠が明確になっていることです。見積書のロジックやその見積書の前提条件などが明確になっていることで金額のずれをなくします。

「根拠のある数字」と「確度」が合わさることで、より正確な数字を管理できるようになります。

2つの注意点

ここまでヨミ表の概要を整理してきました。ここからは注意点になります。

①先行指標は、「受注」と「納品」をわけて管理する

「受注」と「納品」をわけて管理する。先行指標管理で扱う数字は「受注(もしくは成約や内示など)」です。これだけでは、まだ売上は確定していません。売上の見立てであり、期待値を扱っていることになります。

実際の「納品」により、実際の売上や原価は変動している可能性があるため、受注後の案件管理は重要です。

②あくまで仕組みであって、運用するのは「人」

先行指標管理は、稼働率を安定させる有効な手段です。しかし、この仕組みを入れるには注意が必要です。この仕組みをやりますといって簡単に入れることはできません。ひとつの仕組みを入れることは、「現場の働き方を変化させる」ことになります。十分な対話を通じて、仕組みの必要性をメンバーに理解してもらうことが必要です。ひとつひとつの言葉の定義を決めて、それを徹底することは、いうのは簡単ですが、実際は難しいものです。繰り返しになりますが、チームとの対話によって、「共感」と「理解」を得てから導入することが大切です。

ヨミ表活用の事例

ここからは事例についてご説明します。

採用パンフレットを制作している会社の事例を紹介します。

会社案内はひとつのパンフレットを制作するのに、企画から、台割作成、構成案作成、ページデザイン、ライティング、撮影、校正、印刷、納品という流れで作成し、おおよそ3~4ヵ月程度の制作期間が必要です。

制作には、プロジェクトマネージャーから、デザイナー、ライター、カメラマン、校正者、印刷会社とさまざまなメンバーが関わります。制作会社におけるボトルネックは、人の稼働です。案件が増えると、プロジェクトマネージャーが必要になります。

3月から採用広報を開始するお客様を想定した場合、2月に会社案内パンフレットを納品します。逆算すると、前年の10月から11月には、受注している必要があります。10月から11月に受注しているということは、その前にお客様に認知していただき、コンペに参加していなければなりません。8月から9月には営業活動を開始しているべきです。

ヨミ表の基準

この会社ではヨミ表の基準を設けています。コンペ参加依頼は「Cヨミ」、価格と価値を理解していただいているものの、競合との差別化がもう一押しの場合は、「Bヨミ」、契約書と申込書まで提出して稟議待ちの場合は「Aヨミ」というルールを設けています。

この会社は法人向けに新卒採用のパンフレットを制作しています。会社名は「株式会社さんぷるデザイン」という名前にします。

営業の立場になって、ヨミ表を作成してみます。2021年8月27日にお客様から会社案内の引き合いをいただきました。株式会社さんぷるデザインではお客様からコンペ参加依頼がきたらCヨミにするという基準を設けています。営業がコンペ前の説明会へ参加しました。3月から採用広報を開始するので、2月に納品して欲しいという旨と、コンペの時期は9月で、選定は10月にでるとお客様から説明していただきました。同時に予算も300万円で制作を依頼して欲しいとのことでした。

これをヨミ表で表現すると下記のようになります。

コンペ参加はCヨミ

コンペ参加はCヨミ

原価は、株式会社さんぷるデザインでかかる費用を記入しています。それ以外はお客様からヒアリングした内容をもとにヨミ表へ記入しました。

その後、営業が9月にコンペへ参加し、とても良い感触を得ました。価格と価値も十分に理解していただいています。この段階で「Bヨミ」になります。

お客様に価格と価値を理解していただけたのでBヨミ。あと一押し

お客様に価格と価値を理解していただけたのでBヨミ。あと一押し

しかし、競合の会社案内のデザインの方が優秀で最後の判断を迷っているという回答をいただきました。そこで株式会社さんぷるデザインは、電話で追加のヒアリングを行いました。「表現がコンセプトに合っているが、もう少しインパクトが欲しい」という要望がありました。そこで、社内の協力を得て、デザイン案を提出し直しました。

その結果、満足いただくことができて、「契約書」と「申込書」を提出し、稟議へ回していただくことになりました。これで「Aヨミ」になります。

契約書と申込書を提出。あとは確実に資料を受領する

契約書と申込書を提出。あとは確実に資料を受領する

最終的に10月29日までに「契約書」と「申込書」を返送していただきました。これで無事に「受注」となります。

無事に返送していただき、受注

無事に返送していただき、受注

このような流れで、自社の判断基準によって、ヨミを分類し管理ます。この会社は「売上」ではなく、「粗利」を管理指標としておいていたため、「ヨミ係数をかけた数字(ヨミ換算金額)」は粗利の金額になっています。

今回は、案件がひとつでしたが、このように複数の案件を管理することで、未来を予測し、現在の行動を変えることができます。営業活動において同時に案件を動かし続けることが重要です。そのためにはこのような指標管理を使うことが有効です。経営としては、この指標をみることでいつ受注が決まり、納品されるのか(売上が計上されるのか)を管理し易くなります。

ヨミ表で行動を変える

株式会社さんぷるデザインの制作体制が、4案件まで対応できる体制があるとします。

4案件のキャパシティに対して、5案件。確度がばらばら。

4案件のキャパシティに対して、5案件。確度がばらばら。

8月27日の時点で上記のように5案件しかありません。さらに確度では、Aヨミがひとつで、Bヨミが2つ、Cヨミが2つという状態です。この情報から、とれる行動は2つあります。「案件の総量を増やすこと」もしくは「ヨミの確度をあげること」です。

冒頭に戻りますが、稼働率を安定させるためには、安定したヨミが必要になります。

今回は、制作会社を事例にご紹介致しました。制作会社であれば人の稼働を管理しますが、設備を扱う加工業であれば、設備の生産能力を把握した上で、案件管理をする必要があります。

今回は以上になります。ご一読いただきありがとうございました!

読者の方に、フィードバックいただき、冒頭のご挨拶と概念的なものだけではなく、具体的な事例も追加してみました。これからまた変化させていきたいと思います!

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